色覚異常「早く知りたい」 差別批判 検査廃止10年

小学校で義務づけられていた色覚検査が廃止されてから10年がたち、検査を受けずに育った世代が就職の時期を迎えている。色覚に異常があると、職種によっては業務に支障が出る可能性もあるが、現在はほとんどの職業で、色覚での採用制限はない。異常に気付かず就職時期を迎えた人たちからは、自分の色覚の特徴について「もっと早く知りたかった」という声も出ている。【関雄輔】

就職で発覚、職種により支障に■学校独自に健康相談も

 神戸市の高校に通う男子生徒(18)は昨秋、消防士の採用試験直前に眼科に行き、色覚異常を知った。気付かず生活してきたが、赤が見えにくく、薄いピンクは白と区別できない。採用試験では身体検査で再検査に回され「頭の中が真っ白になった」という。
 「色の見え方が人と違うと感じたことはなかった」と男子生徒は語る。「消防士は小さいころからの夢。部活もやめて試験勉強を続けてきた。自分の努力は何だったのか」
 男子生徒は最終的に、色弱者向けの補正眼鏡の使用を認められ、再検査で合格した。「自分の特徴を知った上で、夢を目指すべきかどうか考えられる方が良かった」と話す。

 色覚異常は日本人男性の5%、女性の0.2%の割合でいるとされる。
 色覚検査は1958年に学校の定期健診の必須項目になったが「差別の温床となる」との声を受け、95年度から小学4年時のみに縮小。文部科学省は03年度から、色覚検査を健康診断の必須項目から外した。同省は各都道府県教委に対し、必要に応じて検査を行うよう通知したが、大半の自治体は検査を行っていない。
 色の見え方が他の人と違うかどうかは、本人も周囲も気付きにくい。日常生活にもほぼ支障はないため、就職試験で初めて自分の色覚異常に気付く人も出てきた。色覚での採用制限は現在、ほとんど行われていないが、印刷や塗装、服飾など色を扱う職業ではハンディになる可能性もあるので、早めに自分の色覚を把握し、対策を講じたい。
 独自に検査を続ける学校や自治体もある。兵庫県西宮市教委は昨秋から、市内の全公立小中学校で、希望者を対象に色覚検査を含む「健康相談」を始めた。市教委は「全生徒が検査を受ける必要はないが、進路によっては本人や保護者が早めに気付くきっかけが必要だ」と説明する。
 神戸市のある私立高校は、入学後の検査を現在も続けている。養護教諭は「色覚について誰も話さなくなることがゴールなのではない。自分の特徴を知りつつ、生き方を選べる社会が望ましい」と訴える。
 色覚検査表は今も各学校に常備されている。文科省学校健康教育課は「一律の検査は望ましくないが、不安がある生徒や保護者の方は、保健室に相談してほしい」と話す。

 補正レンズ入りの眼鏡を使うことで、色を区別できるようになる人も多い。
 補正レンズを開発、販売するネオ・ダルトン(大阪市中央区)には、就職試験で色覚異常に気付いた20歳前後の世代からの相談が多く寄せられている。自身も色覚異常がある足立公社長は「視力の弱い人が眼鏡をかけるように、必要に応じて補正レンズを使ってほしい」と話す。
 「色覚バリアフリー」を目指すNPO法人「True Colors」(同)の高橋紀子理事長は「自分の『見え方』を知り、一つの個性として胸を張って生きられる社会になってほしい」と訴えている。

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■色覚異常

 赤と緑、緑と茶などの区別がしにくいケースが多い。検査は、色の付いた小さい丸が密集する円の数字を読み取る「石原式」が一般的だ。かつては、色覚に異常がないことを入学や採用の条件とする大学や企業があったが、厚生労働省は01年、民間企業の雇用時の検査を原則廃止。その後、警察官など公務員も制限が撤廃され、業務に支障のない範囲で色覚を問わなくなった。


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